富士総合火力演習 体験記

富士総合火力演習には2回ほど行ったけどもやはり一番記憶に残ってるのは2015年に最初に行っただった。というのも目の前で戦車などの射撃を見たり聞いたりすることは初めてだったからである。朝に御殿場駅についた時点で155mmと思われる射撃音が聞こえ、バスで会場前まで行った時には会場内に入ってもいないのにも関わらず40mm擲弾の衝撃波を感じるほどだった。それまで火縄銃の射撃音は聞いたことはあったがやはり砲のレベルになるとさらにすごい迫力である。

この記事では昔行った2015年富士総合火力演習予行での体験をその時撮影した写真を交えて書いていきたいと思う。夜間演習が含まれるのは一般公開の本番ではなく自衛官に知り合いがいる人のみの予行演習のみとなる。順番など記憶が結構あいまいな部分ところが多いけども書いていることはすべて実体験です。

2015年 富士総合火力演習 予行当日
朝早く住んでいる町田から御殿場駅まで移動。途中小田急線から御殿場線に乗り換えるためについた新松田駅にはすでに総合火力演習に行くと思われる人がたくさんいた。御殿場につくとすでにズドーンっという155mmりゅう弾砲と思われる射撃音が響いていた。総合火力演習では演習が行われる本番前にも早朝から練習で射撃などをしているためすでに聞くことができるのだ。バスで会場である富士演習場まで移動。時間は25分ぐらいだったかと思う。

会場に到着し売店を横見しながら自分の券に書いてある席のエリアまで移動する。この時点で今度は装甲車が40mmてき弾を的に射撃しており連続した爆発音と的周辺からは土煙が上がっていた。目の前で見る射撃は針のような衝撃波が皮膚にささるようで強烈な印象が残っている。40mmでこれなので90式や10式の120mm砲ならどうなるのかとわくわくが止まらなかった。

演習の開始は午前10時から。トイレなどはたくさん人が並ぶため早めにすませ自分の席まで戻ってきた。演習は前半の前段演習と後段演習に分かれいる。会場は前方にビニールシートの引いてあるエリアがありその後ろにスタンド席がある。この時はビニールシートは自衛官用でその後ろに一般人である私らがスタンド席に座っていた。自分のスタンド席の左側には大きなアンテナが立っている建物があり全体を一望できるためそこにアナウンスや演習を取り仕切る自衛官の方がいるようだ。

演習開始前には音楽隊による演奏がありアメリカの行進曲などを演奏していた。演習開始前には散水車が地面に水を撒いていてこれは戦車など多数の車両が動き回るため土煙を抑えるためのようだ。

アナウンスがありいよいよ演習が始まる。最初にやってきたのは特科連隊の203㎜自走りゅう弾砲、99式155mm自走りゅう弾砲、牽引式のFH70 155mmりゅう弾砲で会場右側から侵入してきた。いよいよ待ちわびた実弾射撃演習が始まる。90式の120mm砲より口径の大きい203mmりゅう弾砲の射撃はものすごいだろうと思っていたため、最初撃つときに耳をふさいでいた。「ってー!」の号令とともに203mmが発射する。ズドーン!ただ正直なところ大したものではなかった。もちろん目の前で操作している隊員にとってはすごい音なのだろうが、自分は数十メートル離れた観客席にいる上に初速の遅い203㎜でしたのでそこまで激しい音ではなかったのだ。

初めて見るりゅう弾砲の実弾射撃の迫力はすごく、数十秒後に砲撃したところから土煙が先にあがる。音はその段階では聞こえない。はっきり肉眼で見えるけども弾着地は観客席から数キロ先なので音がすぐには届かず遅れて聞こえてくるのだ。たしか10秒ぐらいで音が遅れて聞こえてきたかと思う。映画では何キロも先の目標を撃ってるのに弾着と同時に爆発音も聞こえるが、これは間違いなのがはっきりわかる体験だった。土煙が連続してあがっていきその数十秒後に「ドーン、ドーン、ドーン」と聞こえる感じだ。

その後は01式軽対戦車誘導弾の射撃が始まった。ウクライナでも話題になったアメリカ製のジャベリン対戦車ミサイルの日本版みたいな装備である。軽装装甲起動車のハッチ部分から隊員が乗り出して構えて発射する。ミサイルなので発射と共に白い煙が排出され、まるで的で線でつながっているように綺麗に飛んでいった。そして的に直撃。すごい精度。ロックして撃てば後はミサイルが自動で戦車でも装甲の薄い天井部分に当たるためすごい兵器だと実感させられた。ウクライナでロシア軍の戦車がどんどんやられたのも分かる気がする。

次は演習開始前にすでに撃っているのを見ていた96式40mmてき弾銃である。96式装輪装甲車に搭載されており乗っている隊員が操作して発射した。「タタタタ」と乾いた発砲音が会場に響き渡る。数秒後に「ドンドンドン」と土煙があがると同時に爆発音が聞こえてきた。音としては非常に小気味のいい音でちょっと好きだったのは内緒。次は同じ96式装輪装甲車から50口径M2の射撃。隊員が撃ってる時にすごくひじを伸ばして後ろに引き付けるようにしていた。反動を抑えるテクニックのひとつなのだろうか。弾はまっすぐ飛んでいき曳光弾はまるでレーザーのように的をズタズタにしていた。40㎜ほどではないですが迫力満点だった。

次に侵入してきたのは89式戦闘装甲車(IFV)とそれに乗っている普通科隊員(歩兵)だった。89式戦闘装甲車が展開して機関砲を「ドンドンドン」と発射し、その後は普通科隊員が89式と連発で撃っていた。たぶん一般の普通科隊員はそこまで89式小銃で連発の射撃はやっていないと思うので、この演習に参加する人は他の部隊よりたくさん撃っているのだろうか。

また84mm無反動砲の発射が行われた。実際は違うなと思ったのはゲームや映画では無反動砲の弾は見えるぐらい遅いけども、実際は一瞬で弾着していたことだった。よく考えればそりゃそうなのですがエンタメ作品での遅い弾の描写になれているため少し驚いてしまった。発射の白煙が見えたと思ったら次の瞬間には的が爆発して木っ端みじんになっている。やはり実際に目の前で見るということはこういうことを知るために貴重な経験だなと思った瞬間だった。

その後会場左側から侵入してきたのはAH-1コブラとAH-64Dアパッチの戦闘ヘリ達。会場左側のほうでホバリングしながら機関砲を撃ち始めた。ババババと小気味よい音が響き的に命中させている。また搭載するヘルファイアミサイルで遠くの目標を正確に破壊していた。

航空機の後は対空装備である87式自走高射機関砲である。こんな内地で空に向けて実弾を撃つわけにはいかないのでもちろん水平射撃。ドドドドドとすごい連射音で2両が発砲する。すごい迫力だった。航空機はもちろん自分が歩兵だったらこんなので水平射撃されることを考えたら悪夢すぎる。イラクではソ連製の同じような自走対空車両のシルカの機関砲に海兵隊が攻撃されて全員くぎ付けになったそうですが納得の火力だった。

そして今日のイベントの主役である戦車の登場になった。まず74式戦車が会場左側の道から侵入してくる。そして止まると「ズドーン」と主砲を発射。203㎜では肩透かしだったがこっちはもっと衝撃波がきた。74式戦車は105mm砲だがやはり戦車砲だけに迫力が段違いである。そして74式が終わると今度は本命の90式戦車隊が侵入してきた。しかも今度は観客席から比較的近い場所を走行してきている。

そしてその時が来た「〇〇の台!小隊集中行進射!ってー!」と戦車の無線が会場のスピーカーから響き渡る。次の瞬間90式全車が120㎜砲弾を発射し、その瞬間に顔など全身の毛穴と針でちくっと刺されたような衝撃波が飛んできた。人生で一番迫力のある体験だった。一気に観客席がどよめき、すごすぎてみんな笑いが止まらない。この迫力のすごさはどれだけ言葉で説明しようとも無理だろう。映画や動画などからどんなものか想像はしたことあるが、これはそんな甘い想像を軽く吹き飛ばしてしまう。それほどすごい衝撃だった。

間もなくすると午前中の前段演習が終わりお昼休みになった。朝早くに家を出たのは電車などでは少し眠たかったのだが、そんなのどこかへすでに飛んで行ってしまった。すべてが初めての体験に興奮しっぱなしだったのだ。おそらく自衛隊や戦車など興味のない人でもこれを体験したら感動するはず。お昼の時間帯には空挺降下が行われた。ヘリから降下した空挺隊員が正確に降下地点に着地していく。

お昼は売店でポテトとチキンが入ったものを買って席で食べた。午前中だけでもすごかったのにこの後の後段演習でもまた見れると思うと贅沢な気分だった。お昼と食べて撮った写真などを見ていると休憩時間は終了、後段演習が始まった。

後段演習ではUH1というヘリが飛んできて隊員の乗った偵察バイクがそのままヘリ降りてきた。昔はかっこよさから偵察のバイクに憧れる人も多かったと聞く。その後は同じようにヘリから普通科隊員がロープでリペリング降下で降りてきた。揺れるヘリからの降下は怖そうだなと思いながら見ていた。そしてその後にやCH47チヌークという大型輸送ヘリが飛んできたかと思えば、着陸後に4輪の車両がそのまま走って降りていった。チヌークが車両を丸々搭載できるのは知らなったので「おおー!」となった記憶がある。

そして後段演習の見せ場である実際の攻撃状況の再現が始まった。今まで登場した数々の兵器がいっきに目標地帯を攻撃したり前進したりしていく。87式偵察装甲車が偵察し、施設科の車両が地雷元突破用の爆発物の入ったロケット弾を発射、155㎜りゅう弾砲の連続射撃によって数キロ先の弾着地が土煙で覆われる。74式戦車や90式が発砲。陸自装備のフルコース状態だ。

終盤で地獄の黙示録のようなヘリの大編隊が会場左側から侵入してきた。飛んでいるだけなのにすごい絵だった。最後は会場正面にいる10式と89式戦闘装甲車がいっきに発煙弾を発射。演習終了となり駐屯地で流される課業終了のラッパが鳴り響きわたった。

すべて終わった後の満足感は人生でもそう何度も味わえるものではないと思う。こういったものに興味がない方でも本物の実弾射撃演習の迫力はすごくもし機会があるならば体験してみて欲しいと思えるイベントだった。これを民間人である我々を見せてくれる自衛隊にも感謝の一言である。